厚生労働省は2008年度の診療報酬改定に向け、2回目以降の診察で開業医が受け取る再診料の引き下げを中央社会保険医療協議会(中医協)に再提案する方針だ。再診料の引き下げは診療報酬改定の最大の焦点だが、日本医師会の強い反発で昨秋にいったん撤回した経緯がある。厚生労働省は2008年1月16日から始まる中医協の最終協議で健康保険組合連合会(健保連)が強く賛成の意向を示すとにらんでおり、提案し直すことにした。
診療報酬は医師や保健薬局が手がける検査や治療、調剤に対する公定価格。患者の保険料や窓口負担、税金で賄われる。昨年末の2008年度予算編成で総額は決まっておりその配分を2008年2月末までに中医協で決める。
医師の基本的収入である初診・再診料はかねて開業医の方が勤務医より高かった。しかし患者が初めて診察を受けたときに医療機関に支払われる初診料に関しては、2年前の診療報酬改定で「開業医の優遇はおかしい」との指摘を受けて2,700円に統一した。
一方、同じ病気で2回目以降に診察を受けたときに支払われる再診料は、開業医(710円)と病院(570円)の間で今も格差がある。厚生労働省は中医協の議論で段階的な引き下げを提案する方針。引き下げが認められれば、具体的な引き下げ額の協議に入る。
厚生労働省は昨秋の中医協でも引き下げを提案。引き下げ環境の整備のため「開業医の収入は公立病院勤務医より8割も高い」との調査も示し、格差是正を訴えていた。しかし医師会が猛反発した結果、昨秋まとめた「診療報酬改定の基本方針」では、厚生労働省が事務局案として示していた引き下げ方針は削除された。
さらに昨年末の予算編成では初診料や再診料を含む医師の診療報酬の「本体部分」を8年ぶりに引き下げることも決まった。開業医の再診料に切り込む声はかき消され、議論はひとまず立ち消えになった。
厚生労働省が再提案に踏み切るのは、大企業の会社員が加入する健保連が強く引き下げ要求を打ち出すと見ているからだ。昨年末の2008年度予算編成では、中小企業の会社員が入る政府管掌健康保険(政管健保)への国庫負担削減の一部を健保連が肩代わりする方針を決定した。結果として肩代わりが財源を生み出し、診療報酬本体の引き下げを実現した格好だ。
健保連は年末の肩代わり決定の際にも開業医の再診料引き下げを政府・与党に要望している。医師会や与党は引き続き強硬に反対する見通しだが、厚生労働省は「昨年末の予算編成で診療報酬本体の引き下げ財源を拠出した健保連が、改めて引き下げを主張すれば状況は変わる」とみている。
看護師業務拡大 厚生労働省が言及
舛添要一厚生労働大臣は2008年1月7日、医師不足問題などへの対応策を検討する「安心と希望の医療確保ビジョン」の初会合を開いた。「医師とスタッフの役割分担について答えを出したい」と述べ、医師の業務を補助するメディカルクラークや看護師の業務範囲拡大に取り組む方針を明らかにした。「医療保険と介護保険の垣根を取り払ってもよいのではないか」とも語り、両保険を一体的に運営する必要性にも言及した。
開業医と勤務医の平均収入の差
開業医院長 約2500万円
公立病院院長 約2000万円
公立病院勤務医 約1500万円
(注) 賞与を含む。比較対象とした公立病院は病床数300床程度の中規模病院
(出所)厚生労働省「医療経済実態調査速報」
2008年度診療報酬改定のテーマ
・後発医薬品の普及促進
価格が安い後発薬の使用を原則とする方針に変更
・成果主義の導入
脳卒中などの入院患者のリハビリで、病状の改善度で診療報酬に差をつける仕組みを採用
・軽い「処置」の診療報酬廃止
点眼・洗眼や鼻の洗浄、ごく軽いやけどの手当てなど、患者本人や家族でも対応できる処置に支払われている診療報酬を廃止
・75歳以上の後期高齢者に主治医
高齢者1人につき、1人の主治医が年間の医療計画を作成して継続的に病状を管理する制度を創設
・医師不足対策
手厚い小児医療体制整備した病院や正常分娩でない妊婦の救急搬送を受け入れた病院に診療報酬を加算
2008年01月09日 厚生労働省